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むかし、まだ俺が5歳くらいだったころの話。
夏の盛りのある晴れた日の夕暮れ。
すぐ上の兄貴と家の近くの空き地で遊んでいたら、小さな、小さな子猫を見つけた。
灰色の、縞柄の、両手におさまるほどの小猫。
俺も兄貴もうれしくなって、いっぱい撫でた。
『今日はここに隠しておいて、明日の朝、母ちゃんに飼っていいか聞こう!』
そういって 布と一緒に草むらに隠した。
『またね!』
つぎの日 子猫はもうこの世にはいなかった。
一番先に見に行ったのは兄貴。
『くるな』
どうしておれはみてしまったんだろう。
布に包まった 赤黒い塊。
その時、俺は死んだことの意味がわからなくて
原形のわからないそれから 目をそらした。
ほんとはこんなこと、つい最近まで忘れてたんだ。
数時間前、森のはずれで、それを拾ってくるまで。
小さかった。まだ目も開いてないだろう。
灰色の、縞柄の、頼りないもの。
それでもそれは、未だ見えぬただ一つの温もりを探して
懸命に生きようと鳴いていた。
辺りを見回しても、何もいない。
兄弟はどうした?母はどうした?
・・・お前も 消えてしまうのか?
気がつくと俺は手拭いにくるんだそれを懐に入れていた。
いまにも絶えてしまいそうなそれに、ただ一縷の望みをかけて、縋り付くように。
死ぬな。死ぬな。死ぬな。
途中雨が降ってずぶ濡れになったが、お構いなしに部屋に入った。
小さな小さな命を、俺は両手いっぱい使って温めた。
蘇る記憶。両手の中にいる命。
時折ひくり、ひくり、と動くそれに言い知れない恐怖と ほんの少しの希望を抱いて。
逝くな。逝くな。逝くな。
次の日、俺は久しぶりに兄貴に便りを出した。
ちゃんと文章になってたかわかんなかったけどな。
ん?起きたのか。大丈夫か。飯、持ってきてやるからな。
あぁ、あのとき言いそびれた言葉を 今言おうか。
「おはよう。はじめまして!」
これから、よろしくな。
~・~・~・~・~・~・~・~・~
雨宮の今日の出来事です。
ロマンチスト竹谷ごめん。
捏造でなく実話です。
母が拾ってきたんです。ひどく弱っていました。
迷いました。
母猫がいるんじゃないか?なら兄弟はどこだ?
こんな草の根元に放置するか?運んでいる途中だったのか?
明日戻しにいった方がいいのか?母猫は自分の子供だとわかるのか?
あのときの猫と まったくおなじ色・模様でした。